資産運用の「リスク許容度」

「貯蓄から投資へ」という背景は理解できますが、「長期投資」や「分散投資」という文字をあちこちで見かけるようになり、投資や資産運用をすることが目的になってしまっているような気がします。 ライフプランラボでは、資産運用のご相談といっても、いわゆる投資顧問業務は行っておりませんが、それでも資産運用に関するご相談は多いです。 実際のご相談の際には、投資や資産運用にもライフプランニングが必要だと考えていますから、「家計のキャッシュフロー分析」を重視しています。 まずは、投資や資産運用を始める目的を明確にし、各家計ごとに運用方針を確立してもらいたいからです。 ……とは言っても、機関投資家のようなプロの難しい運用方針ではなく、もっと基本的なところですが。

いわゆる投資や資産運用に配分する金額は、どのように決めればいいのでしょうか? 「これくらいだったら、もし値下がりしても大丈夫かな」という感覚的な判断でも構いませんが、どうせなら将来の家計の様子、将来希望するライフイベントから総合的に判断するほうが安心ではないでしょうか。

せっかく投資や資産運用を始めるわけですが、リターンについての目標はどのように決めればいいのでしょうか? 「あまり高いリターンはリスクが高いから、○%くらいでいいかな」という、リスクとリターンの関係も、よくよく考えてみれば非常に奥が深いものです。

また、「リスク」という言葉は、「損失」や「値下がり」という意味に受取りがちですが、予想以上に「儲かった」場合にも使います。 考えていた以上の「含み益」が生じた場合に、どのように対処すればいいのでしょうか? 「さっさと売却して利益を確定させる」「まだまだ儲かるかもしれないから、しばらく様子をみる」「長期投資を考えているから、売却は考えない」というようにいくつも考えられますが、仮に売却するとしても、その後の運用はどうすれば良いのでしょうか。

 

運用にも家計分析を

グラフの詳しい説明は省きますが、家計のキャッシュフロー分析で予測した将来の貯蓄残高推移グラフです。 「現状推移」以外に、資産運用についての総資産運用利回りを「上限」「下限」という二つのパターンで比較しているところです。 このケースでは、リタイア後の資産運用になっていますが、将来の看護・介護やその他、希望するライフイベントのために温存しておきたい金額を明らかにしたうえで、「どれくらいの損失まで家計は耐えることができるのか」という視点で具体的な目安を持っておくことができるようになります。

資産運用は「目的」ではなく、あくまでも豊かで安心な暮らしを実現するための「手段」のひとつです。 好きな人はどんどんチャレンジすればいいと思いますし、どうしてもムリな人に向いた方法もあります。 どちらになっても、「わが家の将来像」を俯瞰して知ることで、家計の安全性は大きく変わってきます。 投資や資産運用にも、ライフプラン分析は効果的ですよ。

 

投資や資産運用にも、ライフプランを

 

 

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人生の選択肢を増やす方法

ズバリ、ライフプランをしっかりと考えてみること。

現役時代の大きな家計上の課題というと、「住宅ローン」「教育費」「生命保険」などが挙げられると思います。 リタイア後というと現役時代に比べるて漠然としていますが、やはり住まい方・暮らし方の全てについての課題はたくさんあります。 「ずっと先のことだから……」ということもありますが、目先の課題を解決するほうを優先するのも仕方のないことかもしれません。

今も老後も、豊かで安心な暮らしを希望するのは当然ですが、長期的な家計の様子を具体的に考えてみることは大切なことです。 将来の家計の様子から逆算して、今の暮らしについて考えることができるからです。

家計上の課題で、「○○しようと思っているのに、なかなかできなくて……」という人は、将来像が具体的でないことが原因かもしれません。

2013-12-10 12.12.03

 

それぞれの家計において、「居心地のいいところ」ってあると思います。 節約するにも、お金を貯めるにも、お金を使うにも、「居心地のよさ」って必要ですよね。 長期的な家計の様子を知ることが、今の家計管理についての「居心地のよさ」にもつながります。

「今、こうしておけば、わが家の暮らしはだいたい大丈夫」

こうした「ものさし」を持っておくと、肩の力を抜いた家計管理ができるようになりますよ。

家計に少しのゆとりが生まれると、人生の選択肢が増えます。 特に、老後のライフスタイルについては、これからますます多様化していくことが予想されます。 お金に振り回される必要はありませんが、選択肢は多いほうが有難いですよね。

家計に少しのゆとりを生むために、できれば多くの選択肢から希望するものを手に入れるために、ライフプランを考えることが必要です。 人生は常に選択の連続ですが、大きな失敗をせず、重要な判断をする場面では、長期的な家計の裏づけが必要ですから。

 

すべてのご相談は、ライフプランが基礎になっています

 

 

老後の暮らしを考えたとき、終活は始まる

「終活」という言葉が、流行語大賞のトップテンのひとつに選ばれたのは、昨年2012年のことでした。 つまり比較的新しい言葉ですが、最近ではニュースなどで終活の話題をよく見かけるようになりましたね。 よく見かけるとはいっても、その内容は主に、「散骨葬などが注目されてきている」「イベントでの入棺体験」「エンディングノート」などが多いのではないでしょうか。

もちろん、そうした話題も終活のひとつですが、「人生の終焉期」とばかり考えていると、「終活」のスタートをきるタイミングは、ますます遅くなってしまいます。 現実に、ライフプランラボへご相談にお越しになる人で、70歳前後の人の場合でも、「終活」や「エンディングノート」の話題になると、「まだまだ私なんて早いです」とおっしゃる方も多いのが現実です。

私はいつも、「終活はライフプランの締めくくりですよ」とお話しをしています。 それは、「終活」がひとつの独立したテーマではなく、ライフプランの延長線上にある共通したテーマだと考えているからです。

 

ライフイベントに予算を

例えば、老後の暮らしの土台となる「住まい」です。 住宅ローンも終わり、長く快適に住むためには、修繕やリフォームが必要な場合も多いですね。 また便利な都市圏のマンションに住み替えるケースもよく見かけるようになりました。 その際に、将来の看護や介護を考えることも多くなっています。 看護や介護を考えるときには、誰が介護の中心的役割を担うのかということも検討材料になってきます。

もちろん、現実には看護・介護の多くは家族の誰かに負担が偏る傾向はありますし、本人たちの意向だけで決められるものばかりでもありません。 しかし、将来を考えたときに、どんな暮らしを希望するのかというとき、看護や介護まで共通したテーマとして考える時代になっていることは間違いありません。

超高齢化が当たり前の時代になり、高齢者を対象としたサービスもまだまだ増えていくでしょう。 選択肢がたくさんあり、希望する老後のライフスタイルが増えても、家計の裏付けを伴わないようでは現実的なものとはいえません。 たくさんある選択肢だからこそ、本当に希望する老後のライフスタイルを実現させたいですよね。 そのための準備は早いほうが、できることがたくさんあります。

 

終活にも、老後の生活設計にも、ライフプランを

 

 

老後の資産運用、NISAよりも先にやるべきこと

NISA(少額投資非課税制度)の登場で、リタイア後に資産運用のスタートをと考えている人も多いのではないでしょうか。 いろいろとメリットのある投資優遇制度ですが、ここでは制度のメリットやデメリットではなく、老後の資産運用について、最も基本的なことについて書いてみたいと思います。

リタイア後ということですから、給与収入など現役時代の収入に代わって、年金収入が普段の生活の支えになります。 支出については住宅ローンや教育費という大きな負担がなくなり、家計の年間収支は安定したものになっているはずです。 つまり、今後の生活設計について家計の裏付けとしては予測しやすい期間になってきます。

(公的年金の将来や、看護、介護等の不安については、また別の視点になります)

NISAは少額投資の優遇制度ですから、投資経験の少ない人が資産運用を始めるには良いきっかけになるかもしれません。 最初は少額で、少しずつ勉強や情報収集をして、経験を積みながら……、というイメージですね。

 

老後の資産運用

さて、そんな投資初心者の資産運用ですが、リタイア後に限らず、リスクについてどのように考えておくかということが大切になってくることは当然です。 少し堅苦しい言葉で表現すると、「リスク許容度」をきちんと測定しておくということです。 家計ごとに、お金の面だけでなく性格なんかも含めて、どの程度のリスクに精神的負担なく耐えることができるのかという考え方です。

(リスクというのは、損失というイメージが強いと思いますが、思ってもみなかった利益を指す場合もあって、なかなか難しい言葉です。ちょっとややこしくなるので、リスクについては「損失」のイメージで書きすすめます)

つまり、わが家の場合、どの程度の損失額まで耐えることができるのか、具体的に考えておくことが必要です。 耐えられる損失の額を常に意識しながら、逆算して投資金額や投資対象を選ぶという考え方が大切になってきます。

ようやく今回の本題……

投資や資産運用を考える場合、「リスク許容度」をしっかりと分析するためには中長期的な家計分析が必要です。 つまり、ライフプランに基づく「家計のキャッシュフロー分析」です。 長い老後の生活ですが、どのようなイベントを希望し、どのような暮らし方、住まい方はもちろん、看護や介護といったことまで含めて具体的に考えてみること。

希望する老後のライフスタイルを実現し、維持していくために必要な家計の裏付けをしっかりと検証してはじめて、資産運用の基本方針も決めることができます。 投資スタイルがライフスタイルに優先することってありませんから。

 

老後の資金計画にも、ライフプランを