家庭で考えたい「金銭教育」
金銭教育とは、金融・経済の仕組みや金融商品の知識を習得するという側面もありますが、私が活動している特定非営利活動法人C.U.Pでは、消費者として身につけておくべき基礎的な生活設計能力を養うものと考えています。過去の護送船団方式の時代から、自己責任原則の時代へと大きく社会が変化したことにより、一般生活者が習得しておくべき知識や情報は質・量ともに飛躍的に増加しました。
さらに、子どもを取り巻く環境として、物に溢れた豊かな社会構造の中にあって、道徳的な金銭感覚や自己管理能力の必要性も高まっています。学校教育の場でも、総合的な学習の時間を使った新たな取り組みも始まっていますが、お金についての価値観や考え方については各家庭によって違うため、画一的な教育に全てを期待するのも難しいのかもしれません。
詐欺まがいの金融商法は、次々と巧妙化しながら一向に減る気配はなく、また、若年者のクレジットカードや消費者金融、その他の問題も増加しています。大人になってから自分自身で決断しなければならない機会はもちろん増えますし、その結果に対する責任の重大性も増していきます。
自分自身できちんと考え、決断し、結果について責任を持つこと。また、それだけではなく、失敗したとしてもストレスに押しつぶされるのではなく、経験としてしっかりと学び取り、継続してその後も自信をもって生活していける。そんな大人に育って欲しいと考えない親はいないのではないでしょうか。
子どもを社会に送り出す前に、家庭でもできる金銭教育…、そのきっかけは決して難しいものではありません。特定非営利活動法人C.U.Pでは、定額制のおこづかいの効用に注目し、子どもへのお金の与え方を考えるきっかけを提供するための、「親子おこづかいゲーム」を作成しました。
ゲームは子どもでも楽しめるように、カードを使ったすごろく形式のボードゲームにしました。月額制のおこづかいをもらって、自分自身で買い物をしながらおこづかい体験ができるようになっています。ゲームを通して、「必要な物」と「欲しい物」の区別や、「お金」や「物」を大切にすること、「お金」では買えない大切なものがあることなどについて子どもたちに学んでもらう形式になっています。また、実際におこづかい帳をつけながらゲームは進行しますので、丁寧に字が書けているか、根気良く計算ができるか、などの再確認にもなります。
小学校の授業時間をつかって、ゲームを行ったときの子ども達の感想を少し挙げます。
「何も考えないでお金を使っていると、すぐになくなってしまう」
「おこづかい帳をつけると、今持っているお金がいくらかすぐにわかる」
「必要な物が買えなくなると困る」
「おこづかい帳をつけるのは楽しい」
「考えてお金を貯めて、欲しい物を買いたい」
小学校でゲームを行う場合は大変な盛り上がりになりますが、そんな中でも子ども達にゲームの目的は伝わっているようです。おこづかい制を使って、お金を上手に与えることで子どもたちは、「今買う」「あとで買う」「あきらめる」といった選択を経験します。我慢し、時には失敗することから学ぶことは成長の過程で必ず役に立つことでしょう。子どものときから許される範囲での小さな失敗を重ねることで、大人になってから起こってしまうかもしれない大きな失敗を避けることができるのではないでしょうか。
家庭でお金について良く話し合い、実際におこづかいを通して経験値を少しずつ高めることが、子ども達の「自立」と「自律」につながるのではないか…、という理念のもと、今後も活動を継続していきたいと考えています。