変わる職業観・就職観
厳しい就職活動は続いていますが、大企業を志向する大学生に中小企業の魅力がうまく伝わっていないことによるミスマッチも、原因のひとつではないかと言われています。 私自身は、キャリアプランについての専門ではありませんが、ファイナンシャル・プランナーとしてライフプラン専門に活動しています。 キャリアプランとライフプランについては、アプローチの方法は違うものの、考え方は非常に似ています。
また、仕事以外のところでNPO法人に所属し、10代の子どもたちや大学生スタッフと一緒に事業を行っていることもあり、若い世代の職業観や就職観について知る機会にも恵まれています。 就職活動中の大学生にとって、最も近い社会人は父親であったり母親であったりすると思いますが、大学生にとっても家族や親戚以外の大人と接する機会は少ないようで、私としても逆の立場から良い経験となっています。
私が就職活動をしたのは、今から30年前のことになりますが、当時、就職と言えば、会社に入って定年まで働き続けることでした。 今のように、転職や起業が一般的な時代ではなかったので、一生働く会社を選ぶという意味では重い決断だったはずですが、それほど悲壮感もなく、どちらかというと楽観的だったということではいい時代だったのもしれません。
当時から、大企業に人気が集中する傾向はありましたが、それは今でも変わりません。 もちろん、給与水準や恵まれた福利厚生など、人気の原因はたくさんありますが、何よりも「安定している」ことや、「誰に聞かれても知っている会社」という意味での魅力も大きいのではないでしょうか。(最近は、大企業の安定性も揺らいでいますが)
思った会社に就職できず、大学院に進学したり、就職浪人としてアルバイトを続けたり、ということも残念ながら仕方ない側面もありますし、「優秀な中小企業もある」ということを伝えるといっても、そのための意識改革を含めて難しいことなんでしょうね。
学校によっては、内容の違いこそあれ、中学校からキャリア教育のプログラムを導入する時代です。 早くから多くの選択肢を示すことや、仕事について考えることも必要なことかもしれませんが、景気回復とともに新卒採用が増えることで多くの問題は避けられるのかもしれません。
また、就職できない学生の人数が多いこともそうですが、個人的には就職後の早い時期に退職してしまう人が多いことも気になります。 就職後3年以内に離職する比率は、大卒3割・高卒5割・中卒7割にも達するという、「七五三の法則」という言葉を初めて聞いてから何年も経ちますが、その後改善したという話は聞かないような気がします。
「苦労してようやく入った会社だったけれども、思っていた仕事とは全く違っていた」
というのもミスマッチのひとつかもしれませんが、ここでも一概に「もっとガマンしなさい」とは、なかなか言えないものです。 さらに、在学中に起業したり、一代で巨大企業グループに成長したIT企業の社長に憧れたり、という部分でも時代の流れということでしょうか。 「こんなはずじゃなかった」というストレスの積み重ねが、短絡的な行動に結びついているとすれば心配です。
いずれにしても、次の就職先が決まらない、これといって今後の方向性も定まっていない、という状態でも離職をしてしまうほどの厳しい職場環境であれば、それも残念なことですが、あまりにもそうしたケースが多いとすれば、やはり考えてしまいますね。
「今は、じっくり社会人としての経験やコミュニケーション能力を積みながら、次のステップを見据え、資金や人脈などの準備を進める時期だ」と考えれば、「ガマン」の度合いも変わってくると思う私の考えは甘いのでしょうか。 長い人生ですから、将来の「生き方・暮らし方」を考えることは大切ですが、生きていくために必要な「お金」を稼ぐ手段についても長期的な目線で考えることが必要です。 ライフプランとキャリアプランは一体です。